車夫馬丁の酒
創業は明治31年。最初は酒粕取焼酎から始まりいも・米など各種の原料を経験する。
戦時中戦後と物資のない時代に貢献してきた焼酎は当時「安価、車夫馬丁の酒」と蔑まれており
その嫌悪感から3代目は売掛金を持ち逃げし廃業へと追い込むが失敗に終わる。
次は儲かってやろうと開き直り法律に触れない範囲で徹底的に新技術を試す。
まずは自然真空蒸留機を開発しこの業界で初の特許をとり、
次に水処理に利用されるイオン交換樹脂やヤシガラ炭素を使って雑味の除去を実現した。
味つけのため砂糖添加するなど次々製品化した商品は本格焼酎というよりもむしろ甲類焼酎に近く、
しかも甘いが故に好調に売れた。
創業は明治31年。最初は酒粕取焼酎から始まりいも・米など各種の原料を経験する。戦時中戦後と物資のない時代に貢献してきた焼酎は当時「安価、車夫馬丁の酒」と蔑まれておりその嫌悪感から3代目は売掛金を持ち逃げし廃業へと追い込むが失敗に終わる。次は儲かってやろうと開き直り法律に触れない範囲で徹底的に新技術を試す。まずは自然真空蒸留機を開発しこの業界で初の特許をとり、次に水処理に利用されるイオン交換樹脂やヤシガラ炭素を使って雑味の除去を実現した。味つけのため砂糖添加するなど次々製品化した商品は本格焼酎というよりもむしろ甲類焼酎に近く、しかも甘いが故に好調に売れた。
転機
しかしそんな中にあっても安酒の域を出ることが出来ず、清酒に対するコンプレックス、
負い目と同時に文化的憧れを持つ屈折した気持ちを依然引きずっていた3代目に転機が訪れる。
1965年長男格(いたる)が誕生する。子どもに残す家業の焼酎屋として自分と同じ思いをさせていいのか。
正常な致酔飲料としての焼酎の在り方を考えることになる。海外にはブランデーの「コニャック」。
ウイスキーの「スコッチ」など価値観を持った蒸溜酒が沢山ある。
「本格焼酎を世界の蒸溜酒より価値あるものにしたい」
その決意から新技術を含め世界基準でおかしいと思う物をすべて排除し現在の造りの原型を造り上げた。
しかしそんな中にあっても安酒の域を出ることが出来ず、清酒に対するコンプレックス、負い目と同時に文化的憧れを持つ屈折した気持ちを依然引きずっていた3代目に転機が訪れる。1965年長男格(いたる)が誕生する。子どもに残す家業の焼酎屋として自分と同じ思いをさせていいのか。正常な致酔飲料としての焼酎の在り方を考えることになる。海外にはブランデーの「コニャック」。ウイスキーの「スコッチ」など価値観を持った蒸溜酒が沢山ある。「本格焼酎を世界の蒸溜酒より価値あるものにしたい」その決意から新技術を含め世界基準でおかしいと思う物をすべて排除し現在の造りの原型を造り上げた。
造りの変革
発想の転換は先ず根本的に造りを変えることから始まった。
本格焼酎の最大の課題は蒸溜、とみた3代目が特に力を注いだのは蒸溜器の開発である。
自ら設計、造っては壊しを繰り返し財産の大半が蒸溜器に消えてしまう。
天盃の歴史は蒸溜器との戦いであったかもしれない。
ほとんどの本格焼酎が蒸溜1回で製品化されているのに対し天盃は2回。
自らヨーロッパに渡りコニャック・スコッチ同様の2回蒸溜を確信し、
世界に一つしかない自社開発の天盃式蒸溜器が完成する。
蒸溜器の開発に取り組むにつれ、初めてモロミが悪いことに気づく。
イオン交換樹脂を使った減圧蒸留の特許を捨て、
飲みやすくするための薬品加工・炭素・砂糖を一切使用しないという社是をつくる。
実際に売れていた焼酎の真反対の造りをしている為経済的には恵まれず、
その思いだけを秘めひたすら品質を高めるために蒸溜器の更なる開発がすすむのである。
(1970年4月)
発想の転換は先ず根本的に造りを変えることから始まった。本格焼酎の最大の課題は蒸溜、とみた3代目が特に力を注いだのは蒸溜器の開発である。自ら設計、造っては壊しを繰り返し財産の大半が蒸溜器に消えてしまう。天盃の歴史は蒸溜器との戦いであったかもしれない。ほとんどの本格焼酎が蒸溜1回で製品化されているのに対し天盃は2回。自らヨーロッパに渡りコニャック・スコッチ同様の2回蒸溜を確信し、世界に一つしかない自社開発の天盃式蒸溜器が完成する。蒸溜器の開発に取り組むにつれ、初めてモロミが悪いことに気づく。イオン交換樹脂を使った減圧蒸留の特許を捨て、飲みやすくするための薬品加工・炭素・砂糖を一切使用しないという社是をつくる。実際に売れていた焼酎の真反対の造りをしている為経済的には恵まれず、その思いだけを秘めひたすら品質を高めるために蒸溜器の更なる開発がすすむのである。
(1970年4月)
大麦100%
当時清酒を造った粕から粕取り焼酎を造るのが福岡の焼酎だったのだが、
天盃のある朝倉一帯は大麦の産地。
大麦は世界的にみてもアルコールの原料としては最も多く使われている原料であり、
米とは違って政治にコントロールされにくい。
3代目はこれらの良質な二条大麦を100%原料に造ることを決める。
そもそも麦焼酎といえば当時は‘麹は米で作る’ことが業界の常識だった。
しかしなぜ麦焼酎に米を使っているのかという素朴な疑問が湧き、
使う原料をすべて大麦でまかなおうと考え麦麹の開発を決意する。
ようやく1975年日本で初めて常圧蒸溜で麦と麦麹だけで造る
無添加の大麦100%の麦焼酎が誕生。
またその翌年には全量福岡・佐賀県産と産地を限定して二条大麦を使用することを定める。
当時清酒を造った粕から粕取り焼酎を造るのが福岡の焼酎だったのだが、天盃のある朝倉一帯は大麦の産地。大麦は世界的にみてもアルコールの原料としては最も多く使われている原料であり、米とは違って政治にコントロールされにくい。3代目はこれらの良質な二条大麦を100%原料に造ることを決める。そもそも麦焼酎といえば当時は‘麹は米で作る’ことが業界の常識だった。しかしなぜ麦焼酎に米を使っているのかという素朴な疑問が湧き、使う原料をすべて大麦でまかなおうと考え麦麹の開発を決意する。ようやく1975年日本で初めて常圧蒸溜で麦と麦麹だけで造る無添加の大麦100%の麦焼酎が誕生。またその翌年には全量福岡・佐賀県産と産地を限定して二条大麦を使用することを定める。
本格焼酎の定義
蒸溜器、原料、造りという本格焼酎造りの骨格が完成し、次は法律(本格焼酎の定義つくり)に取りかかる。
造り・理論・法律この三つが揃わないと本格焼酎として文化的な商品にならないと考えたのである。
現行酒類法では「アルコール含有物を蒸留した酒類のうち、他の酒類を除く」としか規定がなく、
明確な原料、製造方法が規定されそのグレードが世界的に保証されることが急務と考えた。
1986年本格焼酎協議会の総会で問題提起して以来、ことあるごとに定義の必要性を訴えてきたが、
ついに2002年11月本格焼酎の定義が公布・施行された。
3代目の夢がようやく実現、名実とともに「世界に誇れる本格焼酎」の基礎が出来上がったのである。
「車夫馬丁の酒」と見下げられた焼酎も、一挙に世界と肩を並べられる酒となった。
その後4代目に世代交代し、2005年9月全日空の国際線ファーストクラスでは天盃の熟成酒‘博多どんたく’を採用。
喜ばしいことに通常3か月のところ好評を頂きビジネスクラスも加えると7年間の搭載実績を記録した。
蒸溜器、原料、造りという本格焼酎造りの骨格が完成し、次は法律(本格焼酎の定義つくり)に取りかかる。造り・理論・法律この三つが揃わないと本格焼酎として文化的な商品にならないと考えたのである。現行酒類法では「アルコール含有物を蒸留した酒類のうち、他の酒類を除く」としか規定がなく、明確な原料、製造方法が規定されそのグレードが世界的に保証されることが急務と考えた。1986年本格焼酎協議会の総会で問題提起して以来、ことあるごとに定義の必要性を訴えてきたが、ついに2002年11月本格焼酎の定義が公布・施行された。3代目の夢がようやく実現、名実とともに「世界に誇れる本格焼酎」の基礎が出来上がったのである。「車夫馬丁の酒」と見下げられた焼酎も、一挙に世界と肩を並べられる酒となった。その後4代目に世代交代し、2005年9月全日空の国際線ファーストクラスでは天盃の熟成酒‘博多どんたく’を採用。喜ばしいことに通常3か月のところ好評を頂きビジネスクラスも加えると7年間の搭載実績を記録した。
更なる革新
本格焼酎はそもそも蒸溜酒の中では唯一の食中酒である。
また福岡という清酒圏で造られる焼酎の個性を鑑み4代目は温度や飲み方、
料理の組み合わせで変化していくそんな風情を楽しめる本格麦焼酎を作りたいと願う。
減圧蒸留より飲みやすい常圧蒸溜の酒。
コクや味わいがしっかりありながら、そのバランスの良さが飲みやすさを実現し熟成によって一層花開く。
そんな本格焼酎を目指し醸造の部分に新たなチャンジを挑んでいる。
憧れのあるブランデーのコニャックは酸味の強い葡萄の品種が選ばれ、
この酸っぱいワインを蒸溜すると逆にこれが素晴らしい長所となる。
酸が多いと好ましい香気成分の収量が多く葡萄の香りを凝縮したようなブランデーが生まれる。
それをヒントに焼酎の香りとキレを出す為にモロミの「酸」に着目。
微生物により豊富な酸を造りだしその特徴を蒸溜により引き出す。
蒸溜器を自前で作ってきたからこそ、蒸溜と酸の関係を極めた本格麦焼酎の誕生を可能にしたともいえる。
天盃では焼酎の仕込みは秋に始まり春で終わる。
蒸溜後貯蔵、製品として仕上がるには1年の月日を要す。
つまり微生物を育て試行錯誤試した結果は最低でも1年後にしか出ない。
焼酎業界でも前例のない新たな醸造分野での挑戦が今なお続く。
天盃には営業がおらずリベートや値引きもしていない。
社長が杜氏を兼ね、本格麦焼酎専門の蔵元として造りに特化することを目指し進んでいる。
本格焼酎はそもそも蒸溜酒の中では唯一の食中酒である。また福岡という清酒圏で造られる焼酎の個性を鑑み4代目は温度や飲み方、料理の組み合わせで変化していくそんな風情を楽しめる本格麦焼酎を作りたいと願う。減圧蒸留より飲みやすい常圧蒸溜の酒。コクや味わいがしっかりありながら、そのバランスの良さが飲みやすさを実現し熟成によって一層花開く。そんな本格焼酎を目指し醸造の部分に新たなチャンジを挑んでいる。憧れのあるブランデーのコニャックは酸味の強い葡萄の品種が選ばれ、この酸っぱいワインを蒸溜すると逆にこれが素晴らしい長所となる。酸が多いと好ましい香気成分の収量が多く葡萄の香りを凝縮したようなブランデーが生まれる。それをヒントに焼酎の香りとキレを出す為にモロミの「酸」に着目。微生物により豊富な酸を造りだしその特徴を蒸溜により引き出す。蒸溜器を自前で作ってきたからこそ、蒸溜と酸の関係を極めた本格麦焼酎の誕生を可能にしたともいえる。天盃では焼酎の仕込みは秋に始まり春で終わる。蒸溜後貯蔵、製品として仕上がるには1年の月日を要す。つまり微生物を育て試行錯誤試した結果は最低でも1年後にしか出ない。焼酎業界でも前例のない新たな醸造分野での挑戦が今なお続く。天盃には営業がおらずリベートや値引きもしていない。社長が杜氏を兼ね、本格麦焼酎専門の蔵元として造りに特化することを目指し進んでいる。