カトラッチャが焙煎したホンジュラス産スペシャリティ珈琲と麦焼酎専門の天盃の技で生まれたコーヒーリキュールです。

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天盃
COFFEE SPECIALITE(コーヒースペシャリテ)
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〜「コーヒースペシャリテ」誕生物語〜 人と人とをつなぐ商品に。新たなる挑戦

 
まず香りだ。グラスに注ぐそばからコーヒーが香る。後から追いかけるように焼酎と、微かな黒糖の優しい香りが重なる。これはストレートやロックで飲むリキュールだ。口に含むとコーヒーの苦みと香り、すっきりとキレのある焼酎。とんがらず、寄り添うような微かな甘さで引き立る黒糖。最後の一口まで、ホンジュラスの最高品質のコーヒーの芳香が漂う。淹れ立てのコーヒーを飲むときの、ほっとするひとときが濃縮されたかのような贅沢な時間だ。
コーヒーと焼酎でリキュールを造る天盃の挑戦。そこにはコロナ禍で苦境に立たされたホンジュラスのコーヒー生産者への想いと共感、職人の情熱があった。
 
 
 

カトラッチャ珈琲焙煎所そして、ホンジュラス産コーヒーとの出会い

 
 
カトラッチャ珈琲焙煎所そして、ホンジュラス産コーヒーとの出会い
ホンジュラス産コーヒーと天盃の社長・多田の出会い。それは愛媛県への出張で、販売店様を通じてのご縁から、今井英里さんが営む『カトラッチャ珈琲焙煎所』(以下カトラッチャ)のコーヒーを飲んだことから始まった。2019年11月のことだ。今井さんは中米ホンジュラスへ青年海外協力隊で小学校教諭として活動していた時に、現地の素晴らしいコーヒーとコーヒー生産者の想いに心を打たれたのがきっかけで、8月にホンジュラスコーヒー豆専門店を開業したばかりだった。完熟で手摘みの高品質な豆にも関わらず、長年貧困に悩む生産者の声を届けたいと、適正価格で直接輸入して、自ら焙煎して販売していた。「表現したいコーヒーはこんなもんじゃない」と、焙煎で悩んでいた今井さん。
彼女が淹れたコーヒーを飲んで「焼酎製造で考えるとこうだ」と、味や香りなどの感想を率直にぶつけた多田。それ以後、多田がコーヒーを購入して感想を伝えるやり取りから、2人の職人の交流が始まった。フィードバック対して今井さんが焙煎で答えを返す。すっかり、カトラッチャのコーヒーのファンになっていた。
 
 
 

コロナでの窮状。同じ職人としてできること

 
コロナでの窮状。同じ職人としてできること
「毎日飲んでいた、カトラッチャのコーヒーが飲めなくなる」多田は愕然とした。
2020年3月、世界規模の新型コロナウイルスの感染拡大は、ホンジュラスでも起きていた。ホンジュラス政府が国内全域で外出禁止令を発令し、物流や経済がストップ。3月はコーヒー豆の買い付けシーズンだったが、輸出ができなくなっていた。
「輸出もできず、収入は途絶え、このままでは、ホンジュラスの生産者の生活はますます厳しくなるばかり。そして輸出解禁の際、供給過多になればスペシャリティコーヒー(高品質)であるにもかかわらず、コモディティコーヒー(低品質)と同じ扱いを受けてしまいます」
今井さんの元には、カトラッチャのカウンターパート(対等なパートナー)であり、取引するコーヒー全体の品質管理や現地でのまとめを担当する、ホンジュラスのジャスミン農園のナンシーさんからSOSが入っていた。いつもは前向きなナンシーさんが、次の施肥もできない深刻な経済状況と決して言わない助けを求めていた。
「『Buying from artisan(バイイング フロム アルチザン)、職人を残したかったら職人から買え』という言葉があります。私も製造業、職人ですから、そうしたい。なんとかしなければ、という気持ちでいっぱいでした」(多田)
考え抜いて出した答えは、ホンジュラスのコーヒー生産者に、努力が報われる環境を作ることだった。そのために、カトラッチャのコーヒーを使った製品を天盃で開発し、まず返礼品にしてクラウドファンディングを行うアイデアだった。1年前、カトラッチャが焙煎機購入や現地への投資などのクラウドファンディングを行ったため、変化がないとスルーされるに違いない、そう多田は考えた。そこで、特別な返礼品で注目を集める仕掛けを考えたのだ。
「寄付金を送るだけではなく、商品化で次につながることを、同じ職人としてできることをしたかったのです」
「私も生産者のためにできることをしたい。私は、蒸溜酒でしか人を幸せにできないから」。そう今井さんに共同企画を申し出ると、喜んで承諾してくれた。こうしてプロジェクトは始動した。
 
 
 

コーヒー×焼酎でリキュール。価値を高めるクオリティの高い商品に

 
コーヒー×焼酎でリキュール。価値を高めるクオリティの高い商品に
「甘すぎず、そのまま飲んでおいしいコーヒーリキュールを作りたい。ウイスキーやブランデーのようなイメージですね。よい原料で手間隙かけて、単体で完成された商品にしようと思ったんです」
商品開発で多田が重要視したことがある。それは、サスティナビリティ(持続可能性)のある商品にすることだった。サスティナビリティは環境・社会・経済の3つの観点から、世の中を持続可能な社会にするという考えだが、それと同様で、価値の高い商品を生み出し、ホンジュラスの生産者も、販売者も関わる全員が継続可能な事業にすると決めていた。
方向が定まり、さっそく開発に取りかかった。そして、試作を重ねてカトラッチャのコーヒーに合わせる焼酎は、日本初の乳酸発酵させた本格麦焼酎に決まった。天盃の他の焼酎も試したが、ふくよかな酸による甘味・旨味が広がり、後半に向けてキレがある味がコーヒーによく合ったからだ。
 
 
 

もう1つの素材、『筑前町さとうきび部会』の黒蜜

 
もう1つの素材、『筑前町さとうきび部会』の黒蜜
職人の魂が宿るコーヒーと焼酎を使うなら、甘味も妥協したくない。ここで工業生産的な普通の砂糖を使えば意味がない。そこで思い出したのが、地元・筑前町の伝統産業の一つ、黒糖だった。商工会を通じて親しかった『筑前町農産加工所 筑前町さとうきび部会』。ここの釜焚き黒糖と黒蜜は、有機栽培、減農薬のサトウキビを育てるところから行い、通常は黒糖を固めるのに使う石灰を使わない。昔から地元に伝わる伝統の製法を受け継いで作られていた。
生産者の姿勢や思い、製品の質も求めていたものだった。試作すると、コーヒーの持つ香ばしさや苦みには黒蜜のコクのある甘味がぴったりだった。納得のいく素材が集まった。ベストな甘さ、コーヒーの香り、焼酎とのバランスを見つけるための研究が続いた。
 
 
 

完成。瓶の中で熟されていく『コーヒースペシャリテ』

 
完成。瓶の中で熟されていく『コーヒースペシャリテ』
悩んで決めた商品名は『コーヒースペシャリテ』。フランス語でシェフ自慢の料理、特別料理などに付けられる料理用語「スペシャリテ」から取った。「くだけた表現をするなら、とびっきりいいもの」と多田は言う。コーヒー、焼酎、黒蜜、力のある素材で作った渾身作の自信と誇りが表現されていた。
形になった『コーヒースペシャリテ』だが、瓶詰めして完成ではない。瓶詰めの後、ゆっくりと熟成が進む。熟す過程で味が変化し、製造日から約1カ月経ったころからが、本当の飲み頃だという。味の変化を楽しみながら、購入者の手元で育っていくリキュール。面白みのある商品に仕上がった。
 
 
 

人とのつながりも届けたい

 
人とのつながりも届けたい
2020年6月に開始したクラウドファンディングは2週間で当初の目標額を上回る金額を達成し、成功した。支援者に感謝の気持ちを込めて発送した『コーヒースペシャリテ』、次は商品として、より多くの人にカトラッチャが携わる生産者のコーヒーの魅力を、焼酎リキュールという新しい形で伝えていく。
「今回の新型コロナウイルスの流行で思ったことがあります。それは、誰にも必要とされない悲しさでした。コロナ禍による売上減少より、『必要とされていない』と思う自分が一番悲しかった。そして、コロナ感染防止で気軽に人と会えなくなったことで、人とのつながりや縁を強く意識するようになりました」(多田)
返礼品から始まった『コーヒースペシャリテ』。ホンジュラスの生産者とカトラッチャの今井さんがつながり、今井さんと天盃、天盃と『筑前町さとうきび部会』がつながり、職人の魂が1つの形に結実した。そして、これはコロナ禍の中でコーヒーと焼酎が出会い、お互いが必要とされる場所を作り、苦難や悲しみをともに乗り越えようとする道程でもあった。
今後について、多田は語る。「せっかくなら縁のある人と一緒に歩み、伸びていきたいと思っています」
『コーヒースペシャリテ』を手にしてくれる人は、ホンジュラスのコーヒー生産者やカトラッチャにつながることになる。商品を通し、縁をつなぐ商品としてこれからも大切に造っていく。